自分の人生は自分で選ぶ~『幸せになる勇気-自己啓発の源流「アドラー」の教えⅡ』岸見一郎・古賀史健

f:id:boklife:20160530015804j:plain

はじめに

ベストセラーとなった前作『嫌われる勇気』の続編となるアドラー心理学の本です。

今回も自分の自己啓発のためにと思って中身をよく知らずに買いましたが、自分を高める教え以外にも目下、子育て中の私にはドンピシャな内容でした。

ただ、一回読んだだけでは哲学思想なので上滑りしているような感覚を覚えました。3回読んでやっと自分の中に取り込めるというか、頭のどこかに置いておいて日々の子育ての軸にできるかなという思いです。

人を育てるという責任感を再認識させられました。人を育てるという上から目線がそもそもこの教えとは違うわけですが。

 

私的付箋

自分の人生は自分で選ぶ

子どもたちが失敗したとき、たしかにあなたは責任を問われるでしょう。でも、それは人生を賭した責任ではない。ほんとうの意味で責任をとらされるのは、本人だけです。(中略)最終的な責任を引き受ける立場にいないあなたが、他者の課題に介入してはいけません。(中略)たとえその決断が失敗に終わったとしても、子どもたちは「自分の人生は、自分で選ぶことができる」という事実を学んでくれるでしょう。(p124)

 

本書は哲人と学校の先生である青年の対話形式で、この言葉は哲人から青年へ向けられた言葉です。学校の先生と子供の親とでは子供に対する責任の重さは違うとは思いますが、教育の目的は自立であるという部分に関しては共通した理念だと思います。

しかし放置することではなく、大人は知識や経験があればそれを提供し、いつでも援助できる距離で見守ること。

そして、子供に対しても尊敬するという態度で接すること。尊敬とは「信頼」することで、「信頼」と「信用」は違う。「信用」とはその人を条件付きで信じるが(銀行の信用貸付がそう)、「信頼」とはその人自身を信じること。

自ら選択する人生を歩ませる、命の危険がない限り、その子を信頼して。

 

 

ほめてはいけない、叱ってもいけない

「ほめられること」を目的とする人々が集まると、その共同体には「競争」が生まれます。他者がほめられれば悔しいし、自分がほめられれば誇らしい。いかにして周囲よりも先にほめられ、たくさんほめられるか。さらには、いかにしてリーダーの寵愛を独占するか。こうして共同体は、褒賞をめざした競争原理に支配されていくことになります。(p136)

 

 

人間は本来弱い存在であり、その弱さを補うために共同体をつくり、分業という協力社会がある。人の心には本来、共同体感覚が内在しており、それは教育で「身につける」ものではなく、「掘りおこす」ものなのだ。

競争原理は人間が本来持つ共同体感覚には馴染まないということなのでしょう。

競争原理の元は自分への承認要求であり、それを目的とする人生は承認をしてくれる他者の人生を生きることになる。ゆえに競争原理を持ち込んではならない。

でも、ほめると子供の動きが良くなるのでついついほめて育てたくなりますよね。でも、それって結局は、自分の都合に合わせて操作しているという指摘には耳が痛いです。ありのままのあなたでいい、生まれた時からあなた自身を信頼=尊敬しているのよという態度で少しでも接するように心がけたいです。

私も親が正しいと思う親の人生を歩んでほしいとは願っていません。たくさん失敗もして納得できる人生を選んでほしいなと思います。

 

 

運命の人はいない

あの「黄金時代」は、もう終わったのです。そして世界は、あなたの母親ではない。あなたは自分の隠し持つ子ども時代のライフスタイルを直視し、刷新しなければならない。愛してくれる誰かが現れるのを待っていてはいけません。(p260)

 

 

 

子供は生まれた瞬間から自分の生をつなげるために泣いて訴えて、大人をコントロールする。まるで世界の中心に君臨しているかのように。しかし、自立した大人になるためには、そのような自己中心性からいつかは脱却しなければならない。それが自立であり、教育の目的である。

そして、他者を愛することを知り、主語が「わたし」から「わたしたち」へと変わる。それはやがて共同体感覚にたどりつく。愛する人はいつか現れるのではなく、目の前の人を愛することから始めましょう。尊敬しましょう。運命の人は現れるのではなく、運命は自らの手で作り上げるものなのだから。

それが、愛する勇気、すなわち幸せになる勇気。

 

 

私的エッセンス

  • 共同体感覚とは、「他者の関心事」に関心を寄せること
  • 「悪いあの人」「かわいそうなわたし」ではなく「これからどうするか」
  • 利己心を追求した先に「他者貢献」がある
  • 幸福とは貢献感である
  • 愛し、自立し、人生を選べ

 

 

目次

第1部 悪いあの人、かわいそうなわたし

  •  アドラー心理学は宗教なのか
  •  教育の目標は「自立」である
  •  尊敬とは「ありのままにその人を見る」こと 他

第2部 なぜ「賞罰」を否定するのか

  •  教室は民主主義国家である
  •  叱ってはいけない、ほめてもいけない
  •  問題行動の「目的」はどこにあるか 他

第3部 競争原理から強力原理へ

  •  「ほめて伸ばす」を否定せよ
  •  褒賞が競争を生む
  •  共同体の病 他

第4部 与えよ、さらば与えられん

  •  すべての喜びもまた、対人関係の喜びである
  •  「信用」するか?「信頼」するか?
  •  なぜ「仕事」が、人生のタスクになるのか 他

第5部 愛する人生を選べ

  •  愛は「落ちる」ものではない
  •  「愛される技術」から「愛する技術」へ
  •  愛とは「ふたりで成し遂げる課題」である 他